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幻想のかけら

オリジナル小説を書いています。現在、「魔法使いの息子」というタイトルで掲載中。

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魔法使いの息子:第36話「ズーノ教」

助手のタロウに呼び出され、トレイは試験会場に向かった。

「今回の助手は、タロウさんですか?」

「ああ、ちょっと、今回はロクでもないことが起きる気がしたからね。
 私がいた方がいいだろうなぁと思って。」

「ロクでもないこと、ですか?」

「うーん。トレイ君は今回の再々試験の実施についてどう思った?」

「またか、という感じですね。嫌われてるのかなって。
 不合格にしたいなら、そうすればいいのにって、ちょっと投げなりに思うところもあります。」

「そうねー。うーん、トレイ君ちょっと警戒した方がいいよ。
 君の同級生みたいにならないように。」

「事故、ですか?
 そういえば調査されてましたよね。あれ、どうなったんですか?」

「うーん。職員内の機密事項扱いでね。調査内容については言えないんだよー。
 私から言える限界は、トレイ君気をつけた方がいいよ、っていうところまでだね。」

「あの精霊召喚したのタロウさんでしょ?」

「そのあたりの細かいところが言えないところでね。」

「ふーん。」

「ときにトレイ君。ズーノ教って知ってるかい?」

「いや、知らないです。」

「神話に出てくる話の中に、ズーノって神様がいてね。神族の裏切り者として、結局はアプラウス様に消滅させられてしまう神様なのだけど、
 その神様を信仰する宗教があってね。もちろん正教会とも敵対関係。特にアプラウス教会の関係者とは最悪の仲だ。
 んで、どーも、君はその教徒から目をつけられているようなんだ。
 アプラウスの剣の中でも、まだ新米だから一番ちょろいと思われているようだね。
 力をつける前にその芽を摘み取ってしまおうと考えられているっぽいよ。」

「それが今回の実技試験と関係あるってことですか?」

「と、私だけが考えている。」

「え、他の職員の方は?」

「他の職員の方達はどうだろうね。少なくとも、私はそうであることを知っているが、
 私はこのことを他の職員には言っていない。
 そして、職員の中にズーノ教徒の関係者がいて、君の実技試験に介入してきている。
 気をつけて。」

「何でそんなことを知ってるんですか?」

「こないだ、その証拠を掴んだ。」

「こないだって?」

「事故のとき。」

「え!」

「この島には強力な結界があり、アプラウス様はこの島での出来事に基本的に介入できない。
 そこをズーノ教徒に狙われている。ただ、君にはアプラウス様以外にも援助者がいる。
 今回の戦いはギリギリなものになるだろうけど、その援助を君は一時的に受けることになるだろうね。」

「何だか、一気にいろんなことを詰め込まれすぎて、ちょっとついていけないんですけど・・・・。
 誰ですか、その援助者って。」

「君が生まれた時から、君を見守っている存在だよ。」

「怪しすぎて、もはやどこから突っ込んだらいいのかわからないレベルですね。」

「嘘は言ってないよ。
 私から言えることは、君は生き残りさえすれば、試験に合格する。
 君が今回の実技試験で取るべき戦略は、命を大事に、だよ。」

「その辺りは、身にしみていますよ。
 父とアルテの背中を、ずっと見てきましたから。」

「余計なアドバイスだったかねぇ。」

試験会場につくと、ジョージに連れられて、そこにはセゼルスがすでにきていた。

「全員揃ったようだね。では、試験を開始しようか。」

サリーエルがそう宣言した。

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魔法使いの息子:第35話「再試験の結果」

翌日、トレイとセゼルスはサリーエルの執務室に呼び出された。
2人が部屋にいくと、サリーエル以外にジョージがいた。なぜか苦い表情をしている。

「サリーエル先生、おはようございます。」

「おはようございます。」

「2人ともおはよう。
 昨日の実技試験だが、判定についてもめてね。もう少しトレイ君の実力を見極める必要が出てきた。
 本日、再度実技試験を行う。」

は?
また、やるのか?

ジョージが補足説明を行う。

「私は合格で良いと言ったのだがね。
 サリーエル先生が、トレイ君の精神魔法以外の実力も見てからではないと
 判断できないと言ってね。
 それも、最初の実技試験で結果は出ていると私は思うのだが・・・」

「ジョージ君。それは散々昨日議論したはずだが?」

「はい。余計なことをいい、申し訳ありません。」

「まあいい。実技試験の準備が出来次第、君たちを呼びに行くから、
 それまで待機していてくれ。」

「わかりました。」

「わかりました。」

俺たちは、各々の部屋に戻った。

思い返して見ても、アレスとの試験で精神魔法以外のものも、オレは実技試験で見せていたはずだ。
黄色の精霊を機能停止に追い込んだはず。なんでこう何回も実技試験をするのか、いい加減、疑問が出てきた。

不合格にしたいなら、そうすればいいのに、そうではなく、再試験、だという。

帰り際、セゼルスに至っては、

「ま、いい練習になるからいいけどね。」

などとのたまっていた。
さすが戦闘ジャンキー。まあ、こういう事態なので、頼りになることこの上ない。

「次の試験でも、役割は同じ感じでいいわよね。
 私は前衛として、防御と支援に徹するわ。攻撃はお願いね。」

「わかったよ。よろしく頼む。頼りにしてる。」

「ふふっ。
 まあ、君なら合格できるはずよ。
 いいとこ見せてやりなさいよ。」

前回の試験でも、前衛としてかなり頼りにさせてもらった。
次の試験でも、あてにさせてもらうことにしよう。
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魔法使いの息子:第34話「セゼルスの戦い方」

実技試験の時間になり、トレイとセゼルスはサリーエルの執務室に顔を出した後、
試験を行う部屋に行った。今回は助手2人控えていた。そのうちの1人はジョージが話しかけてきた。

「今回も精霊を用いるが、安全のため前回の時よりも攻撃力の弱い精霊を用意した。
 私以外のもう1人の助手は、治療師だ。万が一のこともあって、同じことは繰り返さないように、
 今後は、この体制で試験を行うことになったのでね。」

目の前に浮かぶ精霊は前回と似て暗い紫色をした球体。ただ、前回のような赤色の火花は浮かんでいなかった。
この処置は正直ありがたい、とトレイは思った。トレイはサリーエルを信頼できなかったし、
こうして安全策が講じられている状態であれば、前回のような危険な目にはあわずにすみそうだと思った。

「トレイ。私はサポート役に徹しようと思っているのだけれど。
 基本的には距離をとって、防御系や援護系の魔法を中心に使おうと思っているけど、
 それで問題ない?」

セゼルスがこちらを見て、戦いの方針を訪ねてきた。

「ああ、それで構わない。攻撃はオレが中心になって行う。
 セゼルスも状況に応じて、攻撃に参加してくれ。攻撃への切り替えの判断は任せる。」

セゼルスが軽くうなずく。

「2人とも準備はよさそうだね。」

ジョージはそう言って、サリーエルの方を見ると、サリーエルが号令をかけた。

「では、始め!」

セゼルスが軽くバックステップを踏んで精霊との距離をとりながら、防御用呪文を唱え透明な魔力でできた盾を目の前に出現させる。
オレはとりあえず精霊の動きを観察しながら、とりあえず風魔法を素早く唱えて、精霊に向かって風の刃を飛ばす。

前回と同じく精霊の姿が消える。それと同時にオレは視力強化の魔法を唱える。やはり、そうだ。
自分自身の姿を透明化して精霊は動いていた。透明化していても、視力強化の恩恵で精霊のいる場所が多少歪んで見えることで、
ぎりぎりいる位置がわかった。精霊はオレの背後に回ろうとしていた。
振り返って、防御用呪文を唱え、盾を出現させると同時に精霊が姿を見せ、霧のようなものを吹きかけてきた。

「セゼルス、こいつ透明化する!」
「そうみたいね」

霧はオレの周囲を完全に覆った。霧は深く、視界がふさがれたため、霧の広がりの規模はわからない。盾のおかげで直撃は受けていないが、
もし霧の毒の効果があったら、それを吸い込むことになるのは時間の問題だ。
オレは防御用呪文を唱えて、全方位のバリアに切り替えつつ。右方向に走る。

キン!と金属音のような高い音が響く。どうやらセゼルスが精霊に何か剣のようなもので切りつけたかのような音だ。
んー?剣?
魔法じゃなくて?
ここ魔法使いの実技試験会場なんですけど。

霧の中を走り抜けて、部屋の様子がわかるようになった。
セゼルスが手に光の剣?のようなものを手にしている。ああいう魔法もあるのだな、と思っていたら、
精霊の姿が見当たらない。

セゼルスが霧の方向を注視して、光の剣を構えている。
すると、セゼルスが素早く剣を動かして、何かを払うような動きをすると同時に、
キン!キン!と2回高い音が響く。

よく見ると、かすかに透明化された精霊の身体の一部が鞭のようにしなってセゼルスを攻撃しているのがわかった。
それもかなりの速度だ。あんなのよく防御できるな。

「見てばかりいないで、攻撃して!」

怒られてしまった。飛翔の呪文を唱えて、天井付近まで飛んで上から見下ろし、攻撃呪文の詠唱を開始する。
精霊の姿は非常に見えにくいが、空中を上下してセゼルスの周りを時計回りに動きながら、
鞭のようにしなる体で攻撃している様子が見て取れた。セゼルスは光の剣で防御をしている。
と、セゼルスに向かって精霊が霧を勢いよく吹きかける。霧を吹きかけながらも精霊は鞭のようにしならせて
視界が霧に覆われたセゼルスを連続で攻撃すると、キキキキン!と高い音が鳴動する。
って、あの状態で防ぐのか。すげえなセゼルス。アレスよりよっぽど頼りになる。

呪文の詠唱を終えて、オレは精霊に対して攻撃をしかける。
さっきから見てると、どうも物理系魔法が得意な精霊に見えていたので、オレは精神干渉の魔法を選んだ。
精神干渉の内容は、威圧、だ。恐怖心を抱かせ、攻撃する意思を強制的に弱くさせる。
一度かかると、重ね掛けをすることが可能で、最終的には、服従させることができる。
ただ、精神魔法が得意な相手にこれをかけようとすると、そっくりそのまんま返されてえらい目に合うのだが。

精霊の動きが止まる。オレは重ね掛けの効果を狙って同じ呪文を詠唱し、再度、精霊に精神攻撃をかける。
手ごたえがある。部屋に広がった霧が弱まっていき。セゼルスの姿も見えるようになった。
セゼルスは光の剣を構えて、じっと精霊の方をにらんでいる。

「精霊よ。オレに従え。」

オレがそう口にすると、精霊は空中から床におり。動かなくなった。
サリーエルの方をオレは見た。

「う・・・む。終了だ。」

サリーエルがそう口にした。ジョージがオレのほうを見る。目に心なしか賞賛の色が浮かぶ。

「すごいね。攻撃力は下げたけど、それ以外は前回とほぼ同等の強さを持った精霊だったんだよ。」

オレはほっと一息ついた。
威圧の精神魔法は強力だが、それだけ疲労度も大きい。

「結果は、私とジョージで判定する。部屋に戻って、待機していなさい。」

「はい、わかりました。」

・・・

これで試験終了だ。たぶん良い結果が出せたのではないかと思った。
良い相棒を持つと戦いが楽だ。

「凄いなセゼルス。あの攻撃を防御の盾を使わずに、剣で捌くなんてな。」

「バリア張りっぱなしだと、魔力をただ消費するだけでしょ。迎え撃った方が楽なのよ。
 あと、光の剣の魔法だから、あれも魔法よ。魔法。」

「霧吹きかけられたら、さすがに見えなくないか?」

「見えなくてもわかるわよそんなの。なんとなく。」

「そういうものなのか。」

「そういうものなのよ。」

「自分の実技試験の時はどう戦ったんだ?」

「基本的には、飛翔で飛んで、光の剣出して、精霊の懐に飛び込んで攻撃。
 相手からの攻撃はかわすか、光の剣で撃ち落とす、という感じね。」

「それは魔法使いの戦い方なのか?」

「私は魔法剣士目指してるから。」

「そもそも光の剣はいるのか?」

「魔法の実技試験だからよ。ここに愛剣持ってきて振り回すわけにはいかないでしょ。」

「そりゃそうか。」

「それでも、私本来の戦い方はできてないんだけどね。」

「え、あれでか?」

「アルテはあんな戦い方はしない。」

あー、アルテな。あの高みを基準に考えてるんだろうな、この人は。

「ともかく、今日は助かった。ありがとうな。」

「どういたしまして。」

「お互い、試験受かるといいな。」

「そうね。じゃあ、また明日。」

オレたちは、お互いの部屋に戻った。

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魔法使いの息子:第33話「サポート役の生徒」

次の日、ジョージは島にまだ残っている他の受験者達を部屋に集めた。

「すでに聞いているものもいるかもしれないが、実技試験中に事故があり、
 アレス君が命を落とした。」

部屋がざわめく。トレイも驚きを隠せない。

ジョージは受講生達にアレスが命を落としたときの状況の説明を行った。
召還された闇の精霊の攻撃を受けて倒れた後、即座に治療を受けたが、
呪いのようなものがかかっており、回復できずに命を落としたとのこと。
呪いについての原因は調査中で、闇の精霊を召還した教員に状況を聞き取り中だが、
詳しいことはまだわかっていない、とのこと。

「トレイ君の実技試験がそれにより中断された。
 アレス君の葬儀のことや、調査もあるので、現在の進行中の試験の中断の意見もあったのだが、
 最終的に続行することに決定された。
 ただ、葬儀の準備や調査と並行して進めていく必要があるため、日程に変更がある。」

ジョージが受験者達の実技試験がまだ終わっていないものの試験日程と、
合格発表の日程の話をする。

「今日は、トレイ君の実技試験のみ行う。
 ただ、トレイ君の相方が必要になるのだが、だれか、立候補はいないだろうか?」

「私やります」

「セゼルス君か。君はすでに実技試験を終えており、結果待ちの状況だと思うが、、、、、」

「構いません。手伝わせてください。」

「わかった。それでは、よろしく頼む。」

トレイがセゼルスの方を見る。クラスではほとんど話したことのない女子だが、一応知っている顔だ。
アルテの姪。何度か顔を合わせたことがあるものの、詳しくはしらない。
アルテから剣を学びつつも、魔法の適性があったため、アカデミーに入学、勝気な性格、その程度だ。

トレイがセゼルスに軽く会釈すると、セゼルスも会釈を返してくる。

ジョージが、トレイとセゼルスに向けて、実技試験の日時と場所を知らせる。

「トレイ君はこんな状況の中、大変だとは思うが、、、」

「いや、大丈夫です。戦いで人が命を落とすの、見慣れているので。」

「、、、、、そうか。」

トレイの発言で、もともと微妙な雰囲気だったのが、さらになんともいえない雰囲気になる。
トレイは思ったことをそのまま言っただけだったのだが、ちょっと失敗したかな、と少し後悔した。

「話としては以上だ。
 アレス君の葬儀に関しての連絡は、後で別途各自の部屋に連絡がいくと思う。
 解散してくれ。」

トレイが部屋に帰ろうとすると、セゼルスが声をかけてきた。

「よろしくね。」

「ああ、こちらこそよろしく頼む。でも、良かったのか?」

「何が?」

「実技試験もう終わってるんだろ?わざわざ手伝ってくれて、こっちは助かるけどな。」

「魔法で戦うのって、貴重な体験なんだよね。できるだけ経験しておきたいから。」

この女、戦闘ジャンキーだ。

「やっぱり剣の方が得意なのか?」

「そりゃあね。でも、師匠からはせっかく魔法が使えるのだから、そっちも鍛えておけって言われてるからね。
 こういう実践に近い経験が積める機会は貴重なのよ。」

「そうか。それならいいけどな。」

「じゃ、今日はよろしくね。」

セゼルスはさっさと自分の部屋に向かっていった。

実践では剣を封印して、魔法だけで戦うことになるだろうが、
アルテから剣を習っているなら、戦闘はうまいはず。

相方の腕前に少し期待したトレイだった。

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魔法使いの息子:第32話「アレスの治療」

タロウに連れられて治療師のもとに、サリーエルとトレイが来ると、
アレスの体がベッドに横たえられていた。

「彼の様子はどうだね?治療できそうかね?」

サリーエルが聞くと、治療師が答える。

「やけどの方は大したことなさそうなのですが、回復魔法をかけても体力が戻りません。
 呪いのようなものがかかっているようです。急速に弱っていっています。」

「私にも見せてみなさい」

サリーエルが呪文を唱えて、アレスからの魔力の反応を見る。

「確かに呪いのようなものがかかっているね。詳しくは私にもわからないが、、、。」

「何があったのですか?」

治療師の隣にいた、別の職員がサリーエルに尋ねる。タロウと同じく助手の立場の様だった。

「実技試験だ。闇の精霊と戦ってもらったのだがね。
 精霊からの攻撃を受けてこうなったのだ。」

「召還したのは誰ですか?」

「タロウだ。」

全員の視線がタロウに集まる。

「え、、、。わ、、。」

「後で私の部屋に来なさい。詳しい話を聞かせてもらおう。」

「は、はい。わかりました。
 えと、アレス君は大丈夫なんでしょうか?」

「それは私が君に聞きたい。」

「え、えーーー。あの、、、」

「とにかく!私の部屋に来なさい!今すぐに」

サリーエルは足早に部屋を出ていくと、タロウがすぐについていく、
のかと思いきや、部屋の扉を出る前に立ち止まって、サリーエルに質問する。

「あ、あの!トレイ君の実技試験はどうしましょうか?
 こんな事態ですし、日を改めて、かつ、1人ではなく、2人で戦えるようにもう1人サポート役の生徒を選出して、
 実技試験のやり直しを実施してみては!」

「どうでもよいそんなことは。好きにしろ!」

「わ、わかりました。ジョージ!そういうことで話を進めておいてくれ!進め方は任せる!」

「わかったから、早く行けよタロウ。」

治療師の隣にいた助手はジョージというらしい。
タロウはサリーエルを追いかけて部屋を出ていった。

部屋に沈黙が訪れる。治療師はアレスと向き合って、治療のための呪文を色々と試しているが、
効果があまり出ていないのか、しきりに首を振っている。

他の治療師も部屋に来て、様々な呪文を書けて、容態を確認し始めたが進捗は思わしくないようだった。
治療師で部屋がごった返してきた。色々と治療師の間で議論がされているようだったが、
有効な対処方法が打てていないようだった。

しばらくして、ジョージと呼ばれた助手の男がトレイに声をかけた。

「君はもういいから、部屋で待機していなさい。
 実技試験のことは、私で段取りをとっておく。サリーエル先生とも相談しておくから。
 タロウはこの件で手を離せなくなるだろうから、私が助手として進めることになるだろう。」

「アレスは大丈夫なのでしょうか?」

「それは私にもわからない。
 タロウから有効な情報が出てくればよいのだがね。
 それがキモになってくるように私には思える。
 
 悪いことをするような男ではない。何か事故のようなもので、
 強力すぎる、あるいは、厄介な能力をもった精霊を間違って召還してしまったのかもしれない。
 
 そうだとしても、彼からの情報が必要だろう。
 君は心配しなくてよい。我々に任せてくれ。」

「わかりました。」

トレイは治療室を出て、部屋に戻ることにした。

ただ、部屋に戻って落ち着いたとき、少し違和感を感じた。
あの状態であれば、タロウは相当慌てただろうに、自分の実技試験を心配できる余裕がよく合ったものだと。

おそらく彼は責任をとらされることになる。
最悪の事態になったときのことを考えると、気が気ではないだろうに。

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