幻想のかけら

オリジナル小説を書いています。現在、「魔法使いの息子」というタイトルで掲載中。

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魔法使いの息子:第26話「試験会場」

船が孤島フィルズにつくと、出迎えたフィルズの教育係たちの先導で、
トレイたち見習い魔法使いたちは、試験会場である、フィルズの研究施設に連れて行かれた。

今回の受験者は、全部で20名。平均的な受験者数だった。
合格者数は変動が大きく、多いときで5~6人。少ないときは、0。平均では2~3人程度だった。
今回、合格が有望視されているのは、トレイとアレスの2人で、今回はそれで決まる、というのが、
大方のアカデミー教員の見立てだった。
もちろん、そんな予想をされていることを、受験者たちは知らない。

ただ、最終試験がどうなるかは、アカデミー教員たちも予測がつかず、
それがあまりにも予想と乖離した場合や、また事故が発生した場合は、
対応を考える必要があると考えている教員もいる、という状況だった。

「気持ち悪いところだ。」

トレイがぶつぶつ言いだしたのを、ホルスが拾った。

「お前らしくもない。緊張してるのか?
 周りを見ろよ。海はきれいだし、潮風も気持ちいいじゃないか。」

「ああ、そういうのは同意するが、この結界がひたすら薄気味悪い。」

「おまえ、そういうの敏感だよな。俺にはまったくわからないよ。」

研究所の中に、いわゆる授業ができそうな教室のようなところがあって、
そこに受験者たちは誘導された。
名前が書かれたプレートが、机に置かれており、受験者たちは、
それぞれの机についた。

皆が席に着くと、教育係が筆記試験の説明を簡単に行った。
開始と終了の時間、カンニングは禁止されているだのなんだの、
その他もろもろの説明が終わると、試験の問題用紙と解答用紙が配られた。


試験時間は、昼二刻開始~夕二刻終了まで。すごく長い。
さっき船の上で昼食をとったので、それから、夜一刻の晩飯前まで、
ずっと試験、ということだ。休憩なし。

問題用紙は、もはや、用紙というより、40~50ページに渡る1冊の本のようになっている。
解答用紙に解答欄はなく、ざっくりと10枚白紙を渡されているだけ。
フリーフォーマットで、とにかく回答を書いていけ、という感じになっている。
学校で習える基本的なことが抑えておければ問題ないような難易度だったが、とにかく量が多かった。

トレイは心の中で、毒づいた。

まるで、我慢大会のような試験だな、と。
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魔法使いの息子:第25話「出航」

トレイは朝早くにアカデミーを出発し、アカデミーが用意した場所に乗って港に向かった。
正魔法使い昇格試験の開催地である、孤島フィルズには、港から船で向かう必要があるためだ。
港から船に乗りこむとき、同じクラスのアレスが声をかけてきた。

「よう、トレイ。」

「おはよう、アレス。」

トレイがアレスの隣を通り過ぎようとすると、アレスが奇妙な目でトレイを見てきた。

「トレイ、お前、体調はいいか?」

「なんだ?別に普通だけどな。なんでそんなことを聞く?」

「いや、何でもない。」

トレイはふと以前アレスに妙な罠をしかけられたことを思い出した。
魔法検知で見たときは、強力な下剤、程度に思っていたが、
このアレスの反応から見ると、どうも、この日にも何かしらの効果が出るような内容だったようだ。
トレイは、昇格試験の最中は、極力アレスとはかかわらないことに決めた。

船に乗ると、ホルスが声をかけてきた。

「トレイ、おはよう。」

「ホルス、お前、受けるって言っていたか?」

「まだ実力不足かとも思っていたんだがな。
 思い切って受けることにした。
 落ちたとしても、良い経験になるだろうしな。」

「そうか。お互い頑張ろうぜ。」

船の上では、昼食が配られた。トレイとホルスは一緒に昼食を食べながら、
フィルズにつくまでの間、トレイはホルスと一緒にいて、
フィルズに関しての情報交換を色々と行った。

昇格試験は、筆記試験、実技試験、最終試験の3つがあり、最初は筆記試験が行われる。
まず筆記試験で魔法知識を試され、そこで及第点がだなかったものは、不合格となり、
島から出される。

実技試験は、面接のような形を取られ、孤島フィルズの教育掛たちの前で、
魔法をかけるところを見せる必要があり、その出来栄えを見られる。
そこでも不合格となったものは島から出される。

最終試験は、もっとも厳しく、また、過酷なものとされているが、内容に関しては、
見習いたちのところにほとんど情報は来ていなかった。
基本的に口外を禁止されているものであり、ここの合格率が3つの中ではもっとも低かった。
ただ、最終試験の難易度には大きな差があり、実力があるといわれていたものも、
ここで不合格になったり、なかには命を落とすものもいるようだった。

一度、その事故の内容が問題視されたことがあり、
そのときの試験係が査問を受けたことがあった。

最終試験の内容は、口外は禁止されているものの、
そこをこっそりと教える魔法使いもおり、完璧には秘密が守られているわけでもなく、
そこから、事故に関して悪いうわさが出回って、
問題のある部分がアカデミー首脳陣にも発覚したことが、査問が開かれるきっかけとなった。

ただ、査問の結果、問題なしとなり、その試験係は今もフィルズで教育係を務めている。

「トレイ、最終試験では精霊と戦闘することもあるようだぜ。」

「精霊?話には聞いたことがあるが、そんなの見たことないぜ。」

「ケリー先生がこっそり教えてくれたんだよ。ケリー先生の昇格試験のときは、
 精霊との戦闘で、ぼろぼろにされたって言ってたぜ。
 それでも、試験には合格できたって言ってだけどな。」

「そんなこと俺には教えてくれなかったぞ。なんだよ、ずるいなあ。」

「まあ、最終試験までいけるかどうかわからないけどな、オレは。
 トレイは問題ないんだろうけど。」

「受かるつもりではいるが、やってみなければわからんぜ。」

船が孤島フィルズの近くまで来ると、トレイは違和感を感じた。
フィルズには強力な魔法結界がある、と聞いていたが、想像以上だった。
しかも、アプラウスの剣の庇護がなくなったことにも、トレイは気付いた。

トレイは心の中で、ふと、アプラウスのことを心の中で責めた。
おいおい、何がアプラウスの剣だ。意味ないじゃないか。
まあ、もともと自分の力でなんとかしようと思っていたけどな。

ふと、もう一つトレイなりに気付いたことがあった。

アプラウスは、今、オレを見ていない。
今までは、うっすらと監視されている感覚があったが、
この島は何か違う。
アプラウスの監視すら、及ばない結界、ということか。

孤島フィルズに、トレイは少し薄気味悪さを感じた。
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魔法使いの息子:第24話「サリーエルの思案」

「噂のアプラウスの剣、が来るらしな、ザクロン」

ザクロンは、サリーエルの執務室に来ていた。
サリーエルから、話があるから来い、と言われてきたのだ。

「ああ、よろしく頼む。」

ザクロンは、サリーエルと話すのが嫌いだった。
何かしら嫌味を言われることが多く、精神的に本当に疲れてしまうからだ。

「教育係は、オレが担当することになる。
 ミーゴ様から何か聞いていることはあるか?」

サリーエルにとっては、ザクロンの父親であるミーゴの意見は絶対だった。
そこに何かあるなら、アプラウスの剣には、何もするべきではない。

「いや、特に何も。
 ただ、昇格試験が不合格になれば、アカデミー総長の顔がつぶれるかもな、
 といったことは、おっしゃっておられたが、、、、」

おもわず、サリーエルの顔がにやついた。
そうではなくてはな。そうでなくては。

「わかった。
 ところで、お前は、いつまでこの部屋にいるんだ。」

「い、いや、失礼する。」

呼びつけておいて、聞きたいことが全部聞き終わったら追い払う。
この2人の関係はいつもそうだった。


ザクロンが部屋から出ていくと、一人きりになった執務室の中で、
サリーエルは、目を閉じ、妄想した。
いろんなことが思い浮かんでいた。

サリーエルは、アプラウスの剣を、どう扱うか、思索にふけった。

通常の昇格試験のプログラムを、どういう風に特別プログラムに変えるか、それが重要だ。
特に、アプラウスの剣、ということであれば、
通常のプログラムではいけない。特別に訓練する必要がある。

そうだ、特別に厳しくする必要がある。
乗り越えられないようなら、アカデミーからも、
アプラウスの剣として、送り出すことは当然できない。
絶対的に厳しくする必要がある。

少なくとも、自分以上の実力が発揮できないようなら、
アプラウスの剣として、この島から出すことはできないのではないだろうか?

まだ、見習いらしいが、私以上の実力がないなら、
島から出す必要もないだろう。
なんてったって、アプラウスの剣、なのだからな。

サリーエルは、部屋の中で、笑いが止まらなくなっていた。
これは、最高だ。今までにないほどに。


サリーエルは引き出しから、一枚の紙を取り出した。
過去にフィルズ内で発生した事故のリストだ。
しばらく眺めた後、ため息をついた。

だめだ。殺しすぎている。
実力があるとみられていた見習い、の事故が最近は多すぎる。少しやりすぎた。

そのリストには、合格/不合格の結果も合わせて記載されていた。
それを見て、再びサリーエルはため息をついた。

だめだ。実力があるとみられていた見習いの不合格も少し目立つようになってきた。
目立ちすぎないよう、細心の注意を払っていたが、
このままだと、また査問にかけられる可能性も出てくる。
ミーゴ様を頼る手もあるが、やりすぎると見捨てられる可能性もある。

サリーエルは紙を机にしまい。再び、思案した。

相当に実力があればつぶしてしまった方がいいが、
まずは、アプラウスの剣がどの程度か見極めてからでも遅くはない。
父親はエレデだっけか?
その息子ってことだが、知識ばかりで魔力が弱い程度の見習いなら、
少し厳しめの試験にする程度にとどめておいた方が良いかもな。
事故らない程度に、精神的にいたぶる程度に。
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魔法使いの息子:第23話「サリーエル」

サリーエル、とは、一言で言うと、要するに、最低の男だ。

孤島フィルズの研究部門は担当しておらず、そちらには、あまり影響力を持っていないが、
(そちらでは、ザクロンがある程度、実力を発揮できている)
孤島フィルズの教育部門に関しては、完全に支配下に置いている。

体に傷をつけずにいたぶられるのは、フィルズで働く魔法使いたちもそうだが、
それ以上に、正魔法使い昇格試験にくる、見習い達がターゲットにされる。
政治的な力をもっている魔法使いの血縁者や、息がかかっているようなものには手を出さないが、
それ以外の見習いで、かつ、実力がありそうなものを特にターゲットにする。
実力があればあるほど、彼の嫉妬の対象になるのだ。

彼はプライドが高く、自分には実力があると思っているのに、
上級魔法使いでとどまっていることに、激しい不満がある。
そのことも、その見習い達へのいじめに拍車をかけている。

ときには、それは事故に見せかけた殺害、ということにも及ぶことがある。
特に実力のある見習いほど、その事故は起きやすいのだが、
孤島フィルズの魔法結界による秘匿性がその事故の真相を隠蔽する。
サリーエルには、それを可能にするだけの発言力と実行力があった。

また、とくにサリーエルには、女性の見習い魔法使いを、
その昇格試験の中で、いたぶる、というのが大好きだった。
政治力なし、高い魔法の才能あり、おまけに美人、という見習い魔法使いが
昇格試験を受けにこようものなら、事故率はほぼ100%となる。
そういう見習いが昇格試験を受けにくる、ということになると、
フィルズの他の教育係たちは、一斉に彼女を避け、保身に入る。
そして、サリーエルの独壇場となる。

トレイなそんな中、正魔法使い昇格試験を受けに、孤島フィルズにやってくることになる。

もちろん、彼に政治力はない。
エレデ存命中なら、まだ、少し話も違ってくるが、
ケリーには、政治力はないし、他に彼を支えてくれる有力者もいない。
アプラウスの剣、という話があるが、実績はまだなく、
正教会からの支援というだけで、アカデミー内で、それほど価値のあるステータスでもない。
どちらかというと、正教会の息のもの、というので、
実績がなければ、ただ余計に疎まれる存在でもある。
また、アプラウスの剣、というだけに、魔法の才能はある、ということも意味している。

という訳で、事故率はかなり高い状態だというのは、
フィルズの教育掛たちもかなり意識しており、
一斉にトレイが避けられる、というのは、フィルズ内では周知の事実だった。

アプラウスの剣、ということで、アプラウスからの支援もありそうだが、実際は話が違う。
孤島フィルズの強力な結界は、アプラウスからの支援すら阻むのだ。
また、アプラウスの監視すらも阻む。
神すらも阻む強力な結界の中で、トレイは昇格試験に挑むことになる。
ただ、これはある意味、アプラウスから課せられた試練ともいえた。
これを乗り越えられないのなら、アプラウスは彼を見捨てる、ということだ。
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魔法使いの息子:第22話「孤島フィルズの秘匿性」

アカデミーの正魔法使い昇進試験は、フィルズ、という島で行われる。
離れ小島になっており、魔法使い以外は、人の往来もない場所であり、
一般には、場所だけ知られていて、アカデミーの施設がある、という以外には、
まったく情報が公開されていない。

それほど大きな島ではなく、実際、アカデミーの施設以外には、何もない場所だが、
アカデミーの魔法使い達にとっては、とても重要な場所である。

フィルズは、正魔法使い昇格試験の開催場所、というだけではなく、
魔法研究所としての役割も併せ持っている。
フィルズには、かつ、海に囲われていて、外界から遮断されている、ということから、
独自の結界が張りやすく、強力な魔法使いでも、その中をのぞき見る、ということは、
フィルズが許可しない限り、不可能、という状態になっている。

そのため、秘匿性の高い研究はフィルズで行われており、
そこには、アカデミーの頭脳と言われる人材や、高価な魔法道具、
最新の魔法技術などなどが集められている。

ただ、秘匿性が高いために、内部の腐敗も進んでおり、
そのことは、アカデミーでもたびたび問題視されている。

フィルズの長は、ミーゴ、というアカデミー上級教員だ。
自分自身はフィルズにいることはほとんどないが、
息子であるザクロンに管理を任せており、自分の息がかかっている者以外からの
フィルズへの干渉を政治的に拒んでいる。

ザクロンはアカデミー教員だが、魔力が弱く、知識に乏しく、
アカデミー上級教員であるミーゴの息子、ということで、実力不足にも関わらず、
アカデミー教員にあげられた魔法使いである。
孤島フィルズの管理人でありながら、他の教員にはなめられ切っており、
ほとんど発言力はない。ミーゴからはそのことでたびたび叱責を受けているが、
そのせいで余計に縮こまってしまっている。

ザクロンに代わって、ほぼフィルズの実権を握っているのは、サリーエル、という上級魔法使いの男だ。
性格上の問題が在るため、上級魔法使い以上の昇格は見送られているが、
部分的に、空間、上級存在魔法も扱えており、実力的にはウィザードクラスに近い。
アカデミー教員ですらない彼が、実権を握れているのは、
そのサディスト的性格が大きくものを言っている。
フィルズに来た魔法使い達を、体に傷を付けずに、いたぶるのが趣味で、
そのことで彼を怖れる魔法使いたちを、精神的に支配下に置いているのだ。ザクロンもその例外ではない。
しかも、ミーゴは、彼のことをなぜか気に入っており、
そのことも、サリーエルの発言力が増す理由になっている。
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