幻想のかけら

オリジナル小説を書いています。現在、「魔法使いの息子」というタイトルで掲載中。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
このページのトップへ

魔法使いの息子:第31話「追加試験」

翌日、追加試験のため、トレイとアレスはサリーエルの執務室に顔を出した。
心なしか、アレスの表情が暗い。

「サリーエル先生、おはようございます。」

「おはようございます。」

「2人ともおはよう。
 今日も昨日と同じく実技試験を行うが、精霊は前回よりも強力なものを新たに召還した。
 アレス、手加減はしなくていい。
 君の実力は昨日見せてもらったので、君の魔法の強度でも耐えれる精霊だよ。」

「は、はい・・・。」

「では、試験を行う部屋に移動するとしようか。
 2人とも体調は問題ないかね?」

「はい、大丈夫です。」

「大丈夫です。」

昨日と同じ部屋につくと、助手のタロウがすでに待機しており、
精霊が一体タロウの傍に浮かんでいた。
昨日と大きさは似たような精霊だったが、雰囲気が異なっていた。
暗い紫色をした球体で、時折、赤色の火花のようなものが
球面の表情を血液が流れるようにうごめいていた。
一言で言うと、不気味。なんというか、禍々しい雰囲気だった。

トレイは直感的に、アレはやばい、と思った。
魔力に満ち溢れていて、すぐにも強力な攻撃魔法がとんできそうな感じがあった。
試験開始と同時にでかいのがきて、一気にやられる可能性がある。
序盤は、即発動可能な防御魔法を唱えてガードと回避に専念しながら様子見。
初撃を凌いだあとは、何とかアレスと連携しないとなんともならないかな、、と考えた。

横目でアレスをちらっと見ると。
何か思いつめたような表情をアレスはしていた。
どこか心ここにあらず、といった様子。
おいおい、大丈夫かよ、、、、、と思いつつ、トレイはアレスに尋ねる。

「アレス。連携はどうする?」

「臨機応変。好きにしてくれ。」

明らかに危機感がない。目の前の精霊のやばさにアレスが気付いていない様子を見てとったトレイは、
負けを覚悟する。立ち回りでなんとか先生達にアピールするしかないか、などと考えた。

「それでは、準備はいいかな?」

サリーエルが2人に尋ねる。

「サリーエル先生、大丈夫です。始めてください。」

アレスがそう答え。トレイも軽くサリーエルに向かってうなずく。

「では、始め!」

掛け声と同時にアレスが飛翔の魔法を短くつぶやき、空中に飛び上がる。
トレイは短く防御用呪文を唱え、透明な魔力でできた盾を目の前に出現させ、精霊からの初撃に備える。
精霊の周囲から赤色の火花が一瞬強まったかと思うと、それが鞭のようにしなって、
アレスに襲い掛かる。

アレスは空中で鞭による打撃をぎりぎり回避。
よけながらアレスは空中で風魔法を素早く唱え、精霊に向かって風の刃を飛ばす。
と、ここで、精霊の姿が消えた。

「?」

トレイが素早く周囲を見渡しながら、短く別の防御用呪文を唱え、全方位のバリアを敷く、
と同時に、アレスの背後に精霊が突然出現する。

「アレス!後ろ!」

アレスが振り返るより早く、鞭がアレスを撃ち落とす。

「がはっ!」

アレスは鞭に打たれて地面に叩きつけられる。受け身なしでそれなりの高さから落とされたので、結構なダメージだ。

「アレス!」

トレイはアレスの元に走っていく。バリアを敷いている状態でアレスのもとに駆け寄り、アレスの盾となろうとするが、
アレスが地面に叩きつけられた直後に、精霊のいる方向から炎の球がアレスめがけて発射される。

「!」

トレイの目の前で、アレスに炎の球が着弾する。
ノーガードで炎の球をくらったわけだ。ただでは済まない。

「ギブアップです先生!試験の中断とアレスの治療を!」

「トレイ君どいて!」

タロウが駆け寄ってくる。
走りながら小声で呪文を唱えると、タロウの手に持った杖が青白く輝き、青の霧のようなものが杖を包む。
どこかで見たような光景。
タロウは杖をアレスに向けて、精霊を青い霧で包むと、アレスを包んでいた炎が消える。
衣服が黒焦げで大やけどを負ったアレスの姿が現れた。
その姿を見て、サリーエルが感情のこもらない声で静かにつぶやいた。

「おやおや。ずいぶん威力のある攻撃魔法が使えるとは思っていましたが、
 防御の方は、あまり得意ではなかったようですね。」

アレスの体はぴくぴくと痙攣していた。青白い炎はまだアレスの体を包んでいる。
回復効果のある魔法のようだった。
アレスはぎりぎり息はあるようだったが、非常に危ない状態なのが見て取れる。

「タロウ、アレスを急いで治療室へ連れて行ってくれ。」

「わかりました。」

「彼は強力な魔法使いだから、この程度のけがなら回復可能だろう。」

吐き捨てるようにサリーエルが言った。
タロウは魔法でアレスの体を持ち上げて空中に浮かべると、アレスを連れて急いで去っていった。
途中、タロウは地面に落ちていた何かを拾ってポケットに入れる。

トレイがふと精霊の方を見ると、鞭のようにしなっていた赤色の火花は消えていた。
あれは何だったのだろうか?
精霊が使う武器のようだったが、トレイも見たことのない攻撃だった。
アレスの体は痙攣していたことから、炎の球による追撃も大きかったが、
最初の鞭による攻撃の方が、アレスに深いダメージを与えていたようにトレイは感じた。

「トレイ君。君はギブアップといったけど、試験を辞退する、という意味かね?」

「い、いえ。アレスの状態が非常に危険に思えたので、とっさに口にしました。
 不合格で良い、という意味で言ったわけではないです。」

「そうか。では、このまま試験継続しても問題ないかね?」

んん? 何を言っているんだ、この人は?
トレイは、そんな場合ではないように思えた。
アレスの容態を何とも思っていないサリーエルに違和感を覚えた。

「えっと。アレスは大丈夫、なんですか、ね、、、。」

「さっきもいったが、彼なら問題ないのではないかな。タロウの応急処置も適切であったしな。
 君の方が問題ないなら、試験を再開したいのだが?」

この人問題感じてない。神経おかしい。これだから魔法使いは。
トレイは思考停止になりそうになりながら、なんとか質問に答えた。

「試験再開はちょっと待ってください。棄権する訳ではないのですが、
 アレスの容態を見に行きたいです。心配ですし。」

「アレスの事故のことを君が気に病むことはないよ。専門の治療師がいる。今君にできることは何もない。
 それより、合格を目指しているのであれば、試験を再開するべきだ。
 昨日のこともあり、試験の日程が押しているのでね?
 今から再開するか、それとも試験自体を棄権するか、今選んでくれ。」

めちゃくちゃだ。大したことのない事故、という扱いにしようとしている。
そして、いつのまにか究極の選択をさせられることになるようだった。

「えっと。あの、、、、」

「早く決めたまえ」

そのタイミングでどたどたと走ってくる音が聞こえてくる
ふとそちらの方をみると、タロウだった。

「サリーエル先生!
 アレス君のことなのですが、ちょっと急いできてもらってもいいですか!」

「なんだね、一体」

「アレス君の容態が急激に悪化しました。毒による攻撃を受けたことが影響しているようです。」

スポンサーサイト
このページのトップへ

FC2Ad

プロフィール

ぶぶのん

Author:ぶぶのん
FC2ブログへようこそ!

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

カテゴリ

はじめに (1)
第1章「契約」 (21)
第2章「孤島フィルズ」 (15)
登場人物 (1)
世界観 (4)
未分類 (0)
ひとりごと (2)

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。