幻想のかけら

オリジナル小説を書いています。現在、「魔法使いの息子」というタイトルで掲載中。

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魔法使いの息子:第1話「全てを失って」

そのときのことは、よく覚えていない。

アカデミーの式典の最後に、父の葬式が行われ、
色んな人がオレのところに来て、励ましの言葉だろうか?
何を言われたのか、ほとんど覚えていないのだが、
色んな言葉をかけていった。

オレは泣かなかった。

父のことは尊敬していた。
父は魔法使いとしては、アカデミーでも5本の指に入る存在で、
高ランクである「ウィザード」の称号を得ていたが、
さらに、上位ランクである「オズ」の称号の叙勲式を迎えるまでにあたり、
オレは父のことが自慢で自慢で仕方なかった。

明日が叙勲式、というときに、オレは全てを失った。

いまだに理由がわからない。
わけがわからない。

なぜ、父は死ななければならなかったのか。

あの日、巨大な龍がオレの家をいきなり襲った。
龍なんか見たのは初めてだった。

なぜ龍が人里に下りてきて、しかも、オズクラスの魔法使いに
ケンカを売ったのか、誰もわからない、と言っていた。

通常であれば、オズクラスの魔法使いにとって、
龍なんて相手にならないものらしい。オレも知らないのだが。
だいたい、龍なんて、そのときのヤツしか知らないからな。

しかし、そのときの龍は、まさにバケモノだった。
オズクラスの父親の魔法は一切通用しなかった。
オレの目からも両者の力の違いは、明白だった。

さんざんもてあそばれた後、父は、ブレスに焼かれて死んだ。

オズクラスの魔法使いにとって、シールドも張れずに、
むざむざブレスに焼かれて死ぬだなんて、屈辱的だ、恥知らずだ、
と、父を妬む他の魔法使いが言っているのを、
式典で聞いたが、思いっきり殴ってやった。すかっとした。

今のオレは、家もない。父親もいない。
母親は、だいぶ昔に父親を見捨てて、若い男に走った。

さて、どうしようか。

アカデミーの寮に寝泊りしても良いように、
ケリー先生が取り計らってくれたので、
さっそくそこにいって一日中ボーっとしているのもいいが、
なんだか気が向かない。

気付くとオレは、もう龍に蹂躙されて、悲惨な状態となっていた、
家の前に立っていた。

なぜだか、ここに来る道中、周りの人がすごく騒いでいるようだったが、
オレは聞いていなかった。何もかもがどうでも良かった。
周囲に何も気を配らずに、ただ、家の前に来た。
そこで、生まれて初めて、戦いというものを覚えることになるとも知らずに。

そう、これが全ての始まりだった。


・・・・


そこには龍がいた。

昨日来ていたヤツだ。
オレをにらんでいる。
憎しみにあふれた目だ。

オズクラスさえもかなわない龍。
誰に助けを求めても、意味なんてない。
気付くと回りには人は誰もいなかった。

オレとヤツだけだ。

ただ、なぜだか、オレは何も感じなかった。
恐怖も、憎しみも。

ただ、
「ああ、殺されるんだな」
と思った。

オレはそのまま動けずに、ただ、龍を見つめていた。


・・・・


龍がオレに語りかけた。

「返せ」

・・・何のことだ?

「知らないのか?返せ!」

どうも、オレの心を読んで、直接脳みそに語りかけているようだ。
返せって、何をだ?

「おまえの父親が、盗んだものだ。返せ!」

殺せばいいだろう。力づくで奪え。どうせ、何も持っていやしないがな。

「いいだろう!では、死ね!」

龍がブレスを吐くべく、大きな口をあける。


そう、オレはそのときは、まだ、何も知るべくもなかったが、
全てはこれが始まりだった。
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テーマ:自作連載ファンタジー小説 - ジャンル:小説・文学

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